第32回 食卓の弁護士

2012年1月15日


写真: 移民の食卓も守るアボカド。アメリカ、ペンシルバニア州にて

昼食至上主義

レイナの闘病生活がはじまって2年がたった。いちばんの変化は、昼食の献立から肉が消えたこと。治療費と薬代をひねりだすために食費が削られることになったのだ。レイナは幼稚園の給食婦をしていたくらいだから、料理の腕には自信がある。自分の料理をおいしそうに食べる家族の姿を見るのがなによりの楽しみだった。それが昔なら鶏肉が盛られていた皿に、いまではスパゲティか生野菜が添えられているだけ。「こんなへんな料理で悪いね」と言いながらレイナが料理をとりわけてくれるのだが、本人が一番つらいことを知っているので返答に困ってしまう。

昼食の時間が近づくと、通りには胃袋を刺激するにおいが充満し、にわかに人の往来が激しくなる。職場から昼食を食べに帰る人たちや、母親からおつかいを頼まれた子どもたちだ。ドミニカの地方都市で定食屋をあまり見かけないのもうなずける。あるいは、旧宗主国であるスペインの影響がこんなところに残っているのだろうか。家族がそろって食事をとり、シエスタ(昼寝)を挟んで、ふたたび仕事に出向く。昼食が一日の中心という考えかたである。鶏かな? 魚かな? 頭のなかは今日の献立で一杯なのだろう、すれ違う人の表情もどこか明るい。

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著者紹介

窪田 暁 (くぼた・さとる)

窪田 暁 (くぼた・さとる)

1976年生まれ。私立大学にて事務職員として勤務しながら、奈良県立大学商学部、神戸大学大学院総合人間科学研究科を卒業。

現在、総合研究大学院大学文化科学研究科国立民族学博物館)に在籍。ドミニカ共和国からアメリカに渡る野球選手を「野球移民」と定義し、彼らの移動経験とスポーツを介した国際移動の実態を現地調査によってあきらかにすべく研究中。

(株)清水弘文堂書房

TEL 03-3770-1922 FAX 046-875-8401

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