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ギークと文化圏とスタートアップと雇用問題

2011年1月13日

今回は、世界を変えるアイデアやシーズ段階のスタートアップ企業が育つための文化的な土壌から、日本における経済や雇用の問題について考えてみたいと思います。

Geeks in Tokyo

先日、Geeks in Tokyo 201101という飲み会に参加してきました。これは、世界中を飛び回る著名なエンジェル投資家であり500 Startupsを主宰するDave McClure氏が、東京に立ち寄った夜を一緒に過ごしましょう、という趣旨の新年会でした。

Daveがこれまでに投資をしてきたスタートアップ企業は、みなさんもよくご存知の企業ばかりです。Bit.lySlideShareUserVoiceMintKissMetricsSimply Hired、 そして日本発のMyGengoなどです。

ぼくとDaveとの出会いは、前掲のOpen Network Lab(ONL)に立ち寄ってくれた際にご挨拶をしたのがきっかけで、今回ご一緒させて頂くことができました。

宴もたけなわとなった頃に、Daveが突然立ち上がって、会場全体が静まり返るほどの大きな声で、けれど情熱的に叫びました。

熱弁を振るうDave McClure氏。

熱弁を振るうDave McClure氏。

内容は、概ね以下のようなものです。

「日本のIT系アントレプレナー(起業家)は誇りを持て! 君たちはリーダーなのだ。中国含むほかのアジアがすごいという声もよく聞くけれど、彼らが日本という素晴らしい市場で成功するのを見たことがない。
そしてもうひとつ。ここにいるみんな! 孫さん三木谷さん南場さんのように、日本のIT業界で成功してる人たちに会ったら、日本の未来のアントレプレナーたちと直接対話をする時間をどれだけ取っているのか問いただせ!」

“経済と雇用を活性化させるのは既存の大企業ではない”

Daveからのメッセージは、非常に強烈でしたが、とてもよくわかるものでした。それは、彼がそれを実践しているからにほかなりませんが、後述するような経験と重なっているからです。

筆者らは、ONLという場を通じて、直接的に、伊藤穰一氏や、Y CombinatorNils Johnson氏、Dave、さらに経験豊富なONLのスタッフのみなさんとのコミュニケーションを取ることができます。しかし、このような経験は日本においては、とても稀で幸運な状況なのだと思います。

筆者(左)とNils Johnson氏(右)。

筆者(左)とNils Johnson氏(右)。

米国には、シリコンバレーという文化圏があり、 Y CombinatorというONLのモデルにもなったスタートアップを支援する組織があり、 TechCrunch のような素晴らしいメディアがあります。とくにシリコンバレーでは、成功した起業家が、後続を育成するために積極的に近づいてきてくれて、関わってくれます。まさに、NilsやDaveのように。

日本でも、ONLのほかにも、Samurai Incubate Inc.の榊原氏のような立ち振る舞いをする方々がおり、若いスタートアップ企業をサポートする土壌はでき始めていますが、社会全体を見渡したとき、まだ、シリコンバレーのそれにはおよびません。

筆者は、日本における経済や雇用の問題を解決するのは、大企業を守ることよりも、ぼくらのようなスタートアップ企業を支援することに鍵があるのだと信じています。わずか半年や1年で従業員の数を数倍に増やすことのできる組織は、ほかにはないのです。

参考記事

Vivek Wadhwa, “経済と雇用を活性化させるのは既存の大企業ではない―それはスタートアップだ,” TechCrunch Japan, 2010年8月16日.