一人企業


ソーシャルな関係とは?(後編)

2010年8月30日

今回は、前回に引き続き、研究に関する話を離れて、「ソーシャルな関係」についての考察を進めたいと思います。

リアルとソーシャルの融合への過渡期

現実世界にはさまざまな制約がある一方で、サイバースペース上では比較的制約が少ないため、これまでには考えつくことができなかった多様なソーシャル関係を定義することができる可能性を秘めています。

その一方で、現状として、新しいソーシャルグラフは、まだまだ未開拓な状態にあるようです。リンクしたり、フォローしたり、シェアしたりしている現状について、その次にどんなソーシャル関係を定義できるかが、これから多くの人たちにとっての知恵の絞りどころになるのではないでしょうか。どのような新しいソーシャルメディアを創るかという話題から、既存のソーシャルグラフを用いてどのような価値のある分析や可視化ができるのかといった話題まであるはずです。その価値には、経済的、商業的な価値以外にも、楽しくなるような価値や、誰かを幸せにするような価値も創っていくことができます。

GoogleやAppleはぼくらが扱う情報をクラウド上でデジタル化するのを手伝ってくれました。TwitterやFacebook、LinkedInといったソーシャルメディアはぼくら自身に関する情報とほかのユーザとのリンク関係をクラウド上でつくってくれました。

しかし、ぼくら自身とそのまわりの情報のデジタル化と、その情報間でのソーシャル化は、これからくるソーシャル時代の基盤でしかなくて、依然として、一番原子的な機能しか提供されていないのではないかと思います(最近、Twitter上に新しくソーシャルグラフの簡単な分析機能がデフォルトで表示されるようになりました)。では、その次にはなにがあるのでしょう? 

一人企業時代のソーシャル関係には無限の可能性がある

現実世界の社会関係には制約がたくさんあります。しかし、そういった制約から自由になったはずのバーチャルなソーシャル関係には、まだまだ未開拓な荒野がひろがっています。

筆者の理解では、現状としては、制約のないなかにありながら新しい多様な可能性の模索もまだ十分になされておらず、同時に視点を変えてみると、現実世界の優れた社会関係のあり方のほとんどが再現できていないように思います。この、ソーシャルという分野は、まだまだ大きな可能性があるのです。

ぼくらの挑戦は、これを加工したり、編集したり、つなげたり、分類したり、類推したりといった、いろいろなことを自由に試しながら走りつづけることです。

ひとつの方向性を示している例として、あえて制約の少ないソーシャルグラフ上に現実世界の制約を導入することで、新しい価値を生み出している試みがいくつかあります。Foursquareは自由ななかにあえて位置情報という制約を与えることでさまざまな可能性を示している、位置情報に基づいたソーシャルメディアです[1]。Grouponに代表されるフラッシュマーケティングと呼ばれる手法では、時間的な制約を与えることでモノや情報やサービスの価値を高めています[2]。

ソーシャルグラフにどんな意味を見いだすか

ソーシャルグラフ自体は、ノードとアークのある重み付きの有向グラフ(無向グラフの場合もある)でしかありません。すなわち、グラフ構造のデータであるという以上には、なんの価値も意味もありません。

しかし、そこに(まずは現実世界の社会関係をお手本にしながら)さまざまな意味を付与していくことができれば、新しいソーシャルグラフに多様な意味や価値を定義することができます。ここにこそ、筆者のようなデータベースの専門家、すなわち、現実世界とサイバースペースを効果的に変換したり関連づけたりする専門家の重要な社会的な役割があると信じています。

Twitter上で、たんに「フォローする」という行為も、その人の興味や指向性をユーザのアカウントに紐づけて形式化するという意味で、現実世界では、地域の図書館で偶然すれ違った友人が借りようとしている書籍に触発されて、同じものを購入するのと同じ状況をつくり出しているといえます。

逆に、「フォローされる」ということは、反対の立場で考えてみれば、その人の影響力の届く範囲をユーザのアカウントのリストで表現したものということができます。つまり、それは、現実世界において属している個別の関係のコミュニティのなかで、たとえば家庭、学校のクラス、職場、スポーツのチームといったコミュニティにおける人間関係の相互作用を一方の視点から明示的に示したものであるといえます。

偶然職場を訪問していた人があなたが楽しそうに仕事をしているのに感銘を受けるかもしれません。下馬評を覆して勝ち進んだサッカーの決勝戦で偶然対戦することになった相手チームの選手のテクニックに触発されて、人生を変えるような地道なトレーニングの習慣が身につくかもしれません。

これからのソーシャルな関係は、たんにフォローしたり、シェアしたりするだけではなく、現実世界で長い年月をかけて培ってきた多様な社会関係を、そのままの形で上手に活かしたり、それよりも優れた方法で定義し直したりしていくことで、みなさんの生活や人生を大きく変える可能性を秘めていると信じています。

参考文献

  1. [1] Foursquare, http://foursquare.com/.
  2. [2] Groupon, http://www.groupon.com/.

著者紹介

高橋雄介

高橋雄介 (たかはし・ゆうすけ)

1980年生まれ。2003年 慶應義塾大学 総合政策学部卒業、2005年慶應義塾大学 大学院政策・メディ ア研究科修士課程修了。2008年同大学院後期博士課程単位取得退学。博士(政策・メディア)。2005年より同大学院研究員として、知識ベースシステム、マルチデータベース、ビジュアリゼーション、教育およびキャリア開発におけるデータベース利用に関する 研究開発 に従事(~2009年)。2010年11月、株式会社一人企業を創業。2013年2月、米国カリフォルニア州Mountain ViewにてAppSocially Inc.を創業し、CEOに就任。専門は、データベース、知識ベース、マルチメディアデータベース、顧客開発、および、 グロースハック。2013年4月より、米国シリコンバレー在住。

(株)清水弘文堂書房

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