d beauty of 9ja ― 魅するもの、ナイジェリアから


式に集う

2011年10月15日

2009年11月7日 ラゴス オコタ地区のメディナの実家にて

太鼓の音が鳴り響き、祝賀モードで家は華やかにごったがえしている。誰もが歌い踊り、笑っている。何種類もの香水と宴の料理のにおいが漂っている。まばゆいばかりの視線とフラッシュを浴びて、花嫁は座っている。紅と黄金の錦につつまれ、プラチナの目もとでにじむ涙も、微小なクリスタルの汗も、かがやいている。たくさんの人たちから祝福を受けながら、メディナはいま、結婚式を挙げている。

式の規模やスタイル、そして式を挙げることの価値観というのは、民族や国、個人によって異なる。それでも、親しい、身近な、大切な人たちがそろうめったにない機会という意味では、9jaも日本もおなじだ。親戚や友人たちは、それぞれの人生において忙しい日々のさなかであっても、ある人や家庭のために、おなじ時空に集う。

メディナと会うのは4年ぶり。胸もとに大きなウサギのマンガがプリントされたTシャツを着てふざけていた少女を、歓喜のなかで思い出す。いまも変わらぬあの笑顔をしている。鳴りやまない声と音のなかで、永久の円満を願った。

Photo
挙式中、親族のまえでひざまずき、挨拶をしてまわるメディナ。ナイジェリアでは、結婚式は新婦の実家でおこなわれる(これにくわえ、キリスト教徒であれば教会でも式を挙げることが多い)。新郎は親族とともに新婦の実家へ行き、新婦を妻として迎えたいと申し出ることから式は始まる。式が終わると、新婦は新郎の家へ向かう。個人的な意思や価値だけではなく、とくに親族や世間をしっかりと視野に入れることが一般的であるナイジェリアの結婚式は、日本の伝統的な結婚式と共通している。ただ、現代の日本とは異なり、ナイジェリアでは結婚や出産(子を持つこと)が社会的ステイタスとして非常に重んじられるため、職種や貧富の差にかかわらず、結婚することはもちろん、式を挙げることの意味は大きい。
2009年11月7日 ラゴス オコタ地区のメディナの実家にて

(毎週土曜日更新)



著者紹介

緒方しらべ

緒方しらべ (おがた・しらべ)

1980年島根県に生まれる。18歳まで福岡県で育つ。ロンドン大学東洋アフリカ学院(SOAS)にて学士課程をへて、2005年に同大学院修士課程を修了。2007年より、総合研究大学院大学文化科学研究科にて博士後期課程に在籍。

2003年以来ナイジェリアでフィールドワークに従事し、造形活動にたずさわる人びとをテーマに研究をおこなっている。

(株)清水弘文堂書房

TEL 03-3770-1922 FAX 03-6680-8464

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