d beauty of 9ja ― 魅するもの、ナイジェリアから


美味

2011年3月12日

2010年7月3日、イフェ、モダケケ地区の下宿にて

帰国してこのトウモロコシのことを母に話すと、「そう言えばわたしがまだ小さかったころ、そういうすっごく硬くて甘くないの食べてたわ」と、懐かしげに思い出していた。

6月から9月の雨季の盛り、ナイジェリアで豊富に実るトウモロコシ。畑を持つ友人たちを訪ねると、もぎたてのトウモロコシを帰り際に持たせてくれる。

朝7時をまわれば住宅地に響きわたる、いつものメロディにのった「オギ」売りの声。女性たちが頭にのせて歩いて売っている。「オギ」はトウモロコシ粥のもとで、熱湯で溶かして、朝食にすることが多い。午後から日没まで街のいたるところで買えるのは、あつあつの焼き(または茹で)トウモロコシ。女性たちは炭火のうえに敷かれた網のうえでトウモロコシを転がしながら、こんがりと焼いている。夕方から夜にかけては、コーンスターチを蒸して豆腐のようにした「エコ」が売られる。これはご飯の代用で豆や青菜のおかずが添えられる。帰宅途中の人びとでにぎわう交差点で、女性や子どもたちが「エコ」のつまった大きな桶のまえでしゃがんで客を待っている。

ひたすら硬くて全然甘くない9jaのトウモロコシ。なぜかいつも食べてしまうのは、それしか売っていないからなのか、安いからなのか。いや、やっぱりすごく美味しいから、か。

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夕飯をつくる元気がない、という晩には、帰りがけに茹で(または焼き)トウモロコシ(中央)や「アウサ」という木の実を茹でたもの(右手まえ)、バナナ(左)やオレンジ(右奥)などを買って帰る。トウモロコシ屋のおばちゃんも、果物屋のおばちゃんも、いつも「きょうはどこへ行ってきたのかい? おつかれさまだったね。ひとつまけてやるからね」と言って、1日おきにそこで買い物するわたしをお得意様として、娘として、大事にしてくれた。
2010年7月3日、イフェ、モダケケ地区の下宿にて

(毎週土曜日更新)



著者紹介

緒方しらべ

緒方しらべ (おがた・しらべ)

1980年島根県に生まれる。18歳まで福岡県で育つ。ロンドン大学東洋アフリカ学院(SOAS)にて学士課程をへて、2005年に同大学院修士課程を修了。2007年より、総合研究大学院大学文化科学研究科にて博士後期課程に在籍。

2003年以来ナイジェリアでフィールドワークに従事し、造形活動にたずさわる人びとをテーマに研究をおこなっている。

(株)清水弘文堂書房

TEL 03-3770-1922 FAX 03-6680-8464

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