d beauty of 9ja ― 魅するもの、ナイジェリアから


父さんと母さん

2010年9月4日

アーティスト、パパケイの描くポピシとモミシ(ナイジェリア英語で、「父さんと母さん」の意)の肖像画。ラゴスの写真館で1976年に撮った、結婚してまもないころのふたりの写真を貸りて、それをもとに、パパケイに油彩で描いてもらった。ナイジェリアでは、アーティストに依頼して、肖像写真を肖像画にしてもらい、居間に飾ることがしばしば好まれる。贈りものとしても、価値の高いものとして喜ばれる。2010年7月22日、イフェ、モーレ地区のパパケイのアトリエにて。

「そうね、ポピシはモミシをすごく愛してたわ」
二女の大きな丸い目は、微笑みで細くなった。5年前、大学生だった彼女の下宿のテレビの上には、額縁に入れられたポピシの小さなモノクロ証明写真。いま、その写真は嫁ぎ先の家の鏡台に。

「モミシはぼくたちをここまで育ててくれた。ぼくはモミシに幸せになってもらいたいから、サッカー選手になる夢をあきらめることができたんだ」
そして二男はつぶやいた。
「ポピシに会いたい……」
涙でうるんだ目がろうそくの灯に照らされて、少年は下を向いた。

2000年、ポピシは仕事中に事故で亡くなった。モミシは煮こんだ豆を売りながら、ひとりで7人の子どもたちを育ててきた。

モミシの背なかを見てきた4人の娘たちは、明るく、たくましい女性になった。穏やかでけっしてどならない、やさしい3人の息子たちは、ポピシのようだとみんなが言う。触れられそうなくらいに、今でもここで、ふたりは見つめあっている。

Photo
アーティスト、パパケイの描くポピシとモミシ(ナイジェリア英語で、「父さんと母さん」の意)の肖像画。ラゴスの写真館で1976年に撮った、結婚してまもないころのふたりの写真を貸りて、それをもとに、パパケイに油彩で描いてもらった。ナイジェリアでは、アーティストに依頼して、肖像写真を肖像画にしてもらい、居間に飾ることがしばしば好まれる。贈りものとしても、価値の高いものとして喜ばれる。
2010年7月22日、イフェ、モーレ地区のパパケイのアトリエにて。

(毎週土曜日更新)



著者紹介

緒方しらべ

緒方しらべ (おがた・しらべ)

1980年島根県に生まれる。18歳まで福岡県で育つ。ロンドン大学東洋アフリカ学院(SOAS)にて学士課程をへて、2005年に同大学院修士課程を修了。2007年より、総合研究大学院大学文化科学研究科にて博士後期課程に在籍。

2003年以来ナイジェリアでフィールドワークに従事し、造形活動にたずさわる人びとをテーマに研究をおこなっている。

(株)清水弘文堂書房

TEL 03-3770-1922 FAX 03-6680-8464

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