d beauty of 9ja ― 魅するもの、ナイジェリアから


11月の天の川

2010年5月29日

「トイン見て、きれいやね……」
手が届きそうな天の川に、息をのむ。足もとの暗闇、目の前の人ごみ、胸に抱えたバッグ。眠らない、大都市ラゴスの夜。流れに乗ってただまっすぐ進まなければならないのに、立ち止まって見つめずにはいられない。

左斜め前を行くトインが、頭の上のバッグを右手でささえながら、ふりかえる。
彼女はほほえんだ。
「ほら、撮りなよ」

腰に巻かれた布のなかでぐったり眠るのは、もうじき4歳になる体重25キロの息子。頭に乗せたバッグには、今日手伝った友人の結婚式用の着替えと靴に、引き出物の陶器がそれぞれふたり分。会計やゲストの案内役に忙しく、食事は式が終わってから会場の隅でとっていた。襟足を濡らした大粒の汗はうなじをつたい、息子の腹がかさなるその背にぐっしょりと影をつくってこの歩道橋を登りきるあなたに、わたしはただついて行った。

カメラを取りだし、左脇で挟んだバッグにレンズキャップを押しこむ。右目をファインダーに吸いつかせる。その闇に見た無数の星は、あなたのように、うつくしくかがやいている。

Photo
2009年11月7日、歩道橋から臨んだエキスプレス・ウェイ。ラゴス、セレにて

(毎週土曜日更新)



著者紹介

緒方しらべ

緒方しらべ (おがた・しらべ)

1980年島根県に生まれる。18歳まで福岡県で育つ。ロンドン大学東洋アフリカ学院(SOAS)にて学士課程をへて、2005年に同大学院修士課程を修了。2007年より、総合研究大学院大学文化科学研究科にて博士後期課程に在籍。

2003年以来ナイジェリアでフィールドワークに従事し、造形活動にたずさわる人びとをテーマに研究をおこなっている。

(株)清水弘文堂書房

TEL 03-3770-1922 FAX 03-6680-8464

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