清水弘文堂書房マーク 清水弘文堂書房 SHIMIZU KOBUNDO


謹賀新年

2011年1月8日

「花火の音、聞こえる? いま、街中のひとたちがしあわせそうに騒いでるんだ。明けましておめでとう!」年を越してすぐの深夜0時過ぎ、大混乱する電話回線を押しのけてかかってきた着信。電話の向こうで、ラゴスのゲットーを歩くアレックスのはしゃいだ声と眠らない街の音。

つづいてこの部屋の真下、1階の居間で娘と新年を祝うママ・ブリジッタからの着信。「どこへ電話しても混雑で通じないのに、真上にいるあんたにだけ通じるなんて。まあいいわ、明けましておめでとう!」窓の外からは近所で上がる花火の音と、軽快なリズムに乗って響きわたる自動車のクラクション。枕もとの携帯からは、鳴りやまない謹賀新年のメール受信音。ひとり真っ暗な部屋で迎えた年越しは、にぎやかで明るかった。

日傘で日差しをさえぎりながら、冷え冷えのハイビスカスジュースを手土産にパパケイ一家を訪ねた元旦。走りまわる子どもたち、しゃべくる親戚や友人たち、ご馳走の空き皿にソフトドリンクの空き瓶――家中にお祝いムードが充満している。パパケイはケーキをつくりながら待っていてくれた。奥さんが準備してくれた調理用バナナの素揚げとチキンを添えた炊きこみご飯は、はじめて見るかのような山盛り。そのあと挨拶に行った3つの家庭でも、同じような食事がたくさんふるまわれた。お腹いっぱいだったわたしには、タッパーにつめて帰りに持たせてくれた。

あれっ? と思うほど翌日の街は日常にもどっていたけれど、温めなおしたタッパーのなかのご飯は、元日の余韻か、しあわせな味がした。

Photo
熱熱のオーブンを開き、ケーキの焼き加減をチェックするパパケイ。
2009年1月1日 イフェ、モーレ地区のパパケイの自宅にて

(毎週土曜日更新)