犬ごころ、人ごころ


カミツキ犬にはエゴ的「人ごころ」が反映している

2011年11月4日

カミツキ犬にはエゴ的「人ごころ」が反映している


前回、ニューカマーの登場によってかいま見えた邪な「人ごころ」について述べ、そのなかに登場した方の犬がカミツキ犬であることにも触れたが、全国的に犬を飼う意識がかなり高い湘南地域でも、残念ながらカミツキ犬はそれなりの頭数存在しているというのが現実で、当然さまざまなトラブルも起こっている。一番多いトラブルが散歩中に他の犬を咬むということで、その場合、少なからず流血の事態になる。噛まれた犬が最も流血するが、咬んだ方の犬が返り討ちにあうこともあり、場合によっては静止に入った人間が被害に遭うことも発生している。

カミツキ事件は普通、犬がリード(引き綱)からリリースされているケースだけに起こると思いがちだが、私の体験からくる実感としては、もちろんそういうケースもあるが、リードにつながっていてもその発生確率はあまり変わらないと思う。逆にリリースすることはいけないことであるから、そういうケース自体が少なく、リードにつながっているときの方が、人間側に油断もあり、かえって発生件数は高いかもしれない。だから私がここで伝えたいことは、「つながっている・いない」ということがテーマではなく、カミツキ事件は100%人間側に責任があるということ(つまり犬には責任がない)ということと、そうさせてしまった「人ごころ」について述べたいのである。

私が見てきたり、体験してきたカミツキ事件、流血事件をふりかえると、自分の愛犬が残念ながらカミツキ犬となってしまった飼い主さんからは、やはりエゴを感じる「人ごころ」が透けて見えてしまうことが多い。一番わかりやすくそれが現れるのは、事件が起きた直後だ。つまりカミツキ犬が相手の犬を傷つけてしまったときに、自分の方には(人も犬も)非がない、責任はないという種類の主張や態度を、大なり小なり示すかことがほとんどだったのだ。犬のこの種の事件は自動車同士の交差点事故と同じで、過失比率が100対0というケースはまずなくて、主張し出せばキリがなくなる類いの話であり、また軽微なケースがほとんどで、さらに普通は飼い主同士が知り合いでないケースが多いので、常識人ならばその場でお互いに穏やかに話をするのが常道だ。

ただ、いくら100対0のケースがないとはいっても、明らかに過失や落ち度がどちらにあるかがハッキリしているケースがほとんどで、非がある側は誠実にお詫びをし、一見して流血していることがわかるなら当然のこと、わからないケースもあるので治療費の件も含めて話をし、お互いの連絡先の交換などをその場で済ませてその場を収めるのだが、この誰が考えても当たり前のようなプロセスを踏まない飼い主さんがいるということも覚えておきたい。非を認めなかったり、逆にこちらが悪いような言動を、分別がある年齢の方が発したり、男性のみならず、女性もそういう態度を見せるのである。

私が知っているいくつかの事件では、残念ながらそのような非常識なケースが多い。なので被害を受けた側は、今でも許せない気持ちを抱いている方もいる。また、そのときでことが終わらずに、いまだに現在進行形の場合も少なくない。つまり、同じようなことが繰り返されるということである。被害を受ける犬がどんどん増えていく場合もあれば、二度も三度も同じ犬に噛みついていく場合もあるから驚きだ。この手の犬の飼い主は非を認めない自己中心的なエゴイストであるから、自らを省みてきちんと反省をするはずもなく、被害を受けた側の人や犬のこころに思いを馳せるようなことをする可能性は低い。だからそういう人は行動や散歩のスタイルを真剣に見直さないし、自分の犬をしつけ直すことも行わないから、ふたたび事件が起きるのである。

自分の犬が人や犬を咬んでしまうならば、リードのリリースはしないだろう。また、あえて他の犬に近づこうともしないだろうし、近づくにしても細心の注意を払い、しかるべきステップを踏みながら行うだろう。このような散歩のスタイルや行動を変えていくことは、犬飼いではない人が考えても容易に理解できることにもかかわらず、私が知っているカミツキ犬の飼い主はほとんど修正しないか、修正したとしてもそのペースはとてもゆっくりだったり、一時的に直すに過ぎなかったりする。

また、厄介なことにその手の方は犬そのものが大好きなことも多いので他の犬にも近寄りたいし、自分の愛犬を楽しく遊ばせてあげたいという気持ちが強すぎるので、リードをリリースすることをやめないし、また自分の犬がカミツキ犬にもかかわらず、自信とプライドを持っていたりするから「犬通」ぶったりして間違った知識などをばらまいたりしてしまうのだ。

前に犬は飼い主に似てくるというようなことを書いたが、その延長で述べるとすると、他の犬を攻撃するようになってしまったカミツキ犬は、やはりその飼い主さんの「人ごころ」のなかの一部分、たとえばエゴ的なよからぬところを映し出してしまったと言えるのではないだろうか。少なくても私はそう確信しているし、子どもや犬のような保護される弱い存在は、大なり小なり親や飼い主の「人ごころ」を映し出す鏡なのだ。だから、犬を飼うならたんなるペットではなく、そのぐらいの矜持を持って暮らしていきたいと私は心がけている。

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先代犬のセナがアンディをパクリ!アンディもおとなしくしている。これは甘噛みの一種でお互いの深い親愛の情の現れ。流血事態は必至のカミツキ犬の場合とはまったく異なる

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大きく口を開けてジャレあうシンゴくんとナッちゃん。これは遊びだったので問題はないが、ジャレ合いも油断すると突然ケンカになったたり、上下決めや縄張りを巡る戦いに発展するから要注意。ある犬はその辺の注意が足りずに、本当にカミツキ犬になってしまった


著者紹介

池野谷 健二(いけのや けんじ)
Editor, Photographer, Writer, DTP Director
湘南・鵠沼在住
ken [at] dogphoto.jp ([at] を @ に変えてください)

出版社勤務を経てから平成2(1990)年に独立。様々な編集・制作業務に携わり、20年以上にわたる雑誌編集長のキャリアも持つ。現在はフリーとして活動中。

1997年、ゴールデンレトリーバーのセナ(♂)を飼い始めたことがキッカケで犬の撮影を始め、2002年に2匹目のアンディ(♂)も家族の一員に。それからは愛犬が生活の中心にいるという生活となる。2010年4月、初代のセナが亡くなり、2011年3匹目のディロン(♂)が家族に加わり、現在は2匹のゴールデンとともに暮らしている。

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