犬ごころ、人ごころ


犬の写真を上手に撮りたいー2

2011年8月6日


前回から犬の写真の撮り方についてのシリーズをはじめた。まず、総論的だがほかではあまり言われていない、私なりに大切だと思っている話をいくつか述べ、そのあとにいくつかの基本的な撮影における注意ポイントを説明した。

今回は、その続きを述べたいと思う。

「犬を撮るときは犬の目線と同じぐらい低い位置までカメラを下げて撮ることがひとつのコツです」という解説が、よく犬の撮影指南書などに書かれている。これも犬撮影の大切なポイントとなる。犬目線と同じローアングルにすれば、カメラは犬を正対してとらえることになり、顔・表情や身体つき、しぐさなど、自然に近い状態で収めることが可能になるからだ。

しかし、ローアングルでの撮影には、普通に立った状態で犬を撮ることに比べて、けっして簡単なことではなく、逆に難しい部類に属する撮影だと覚えておいたほうがよい。はるかにたくさんの注意するポイントや撮影技術が必要で、初心者がすぐにコンスタントに撮れるものではない。

まず、犬目線までローアングルになると、撮影者はしゃがんだ状態はもちろんのこと、小型犬なら完全に地面に寝転んだ状態にならなければならない。ということは、その体勢でファインダーをのぞいたり、液晶モニターを見ることもかなり困難な作業で、また、撮影者自身が被写体の状態に合わせて瞬時に移動したり、アングルやフレーミングなどの微妙な調整をすることも、極めてやりにくくなる。ローアングルではこちらの動きがキツく制限されるのだ。

幸いにも犬がジッとしてくれているならばいいのだが、現実はなかなかそうはいかず、ちょこちょこ歩いたり、居場所は動かなくても、頭や身体を振ったり、顔の角度が変化したりする。また、ローアングルのときも前回ポイントとして説明した当たる光の角度や背景に気をつけることは怠らず、それを考慮して撮影位置やフレーミングを決めるわけだが、犬がちょっと動いてしまうことによって、徒労に終わることなどは頻繁に起こり、おまけにこちらの動きが制限されているので、そのときに少しのアジャストでクリアしようとしてもなかなか成功しないのだ。だから、はじめからどうせ上手くいかないぐらいの気楽さで、数打てば当たると思ってめげずに何度もトライして見てほしい。そうすれば少しずつローアングルの感覚がつかめてくる。残念ながらこれに関しての撮影上達の近道はありません。

そのほかにも、ローアングルでの撮影では、選ぶレンズや各種の設定も十分考えて行う必要がある。まずはレンズ。ローアングルの撮影のときは、たいがい犬とは至近距離の場合が多くなり、だから望遠系レンズのときはもちろん、35mm版換算で標準サイズの50mmでも、フレームに入り切らないということが起こってしまう。苦労して撮影したのに、仕上がりを見たら肝心のワンコの顔が切れていたり、身体の意図しない一部しか写っていないということになるわけだ。なので、基本は持っているなかで最高の広角(ワイド)レンズを採用してチャレンジするのが無難だ。ズーム付のコンデジだったら、一番ワイド側に設定する。

また、至近距離なのでピントも大きな課題だ。レンズにはそれぞれピントが合う最小距離というものがあり、望遠系のレンズはその距離が長く、広角系の方が近づいてもピントが合う。さらに、マクロ機能があれば、さらに接写も可能だ。ローアングル撮影でワイド系のレンズを選ぶのは、このような利点があるからなのだ。

なおピントは、デジカメ時代の今はオートフォーカスが常識となっている。特に犬のローアングル撮影では、ファイダーをのぞいてマニュアルでピントを合わせることはほぼ不可能だから、オートフォーカスをフルに活用しなくてはならない。しかし、オートフォーカスといっても機種ごとに設定がかなりカスタマイズできたり、その機種なりのフォーカスの仕組みや特徴がある。また、いろんなシーン設定の違いによっても(スポーツ、ペット、風景など)によってもフォーカスの具合が違うこともあるので、気をつけてほしい。

このように、オートフォーカスにしろ、レンズにしろ、ピントが合う最小距離にしろ、とにかくお使いのカメラの機能は、面倒がらずに、とにかくよく説明書を読んで把握し、いろいろテストして各機能の違いを実感を持って理解しておかなければ、よい犬の写真は撮れない。また、そのテストを通じて自分の写真をチェックするということは、前回書いた大切なことのひとつ「写真を選ぶという行為が上達していく上でボディーブローのように効いてくる」ということの実践にもなるわけである。

そして使用しているカメラが把握でき、自分の手足のように使えるようになってきたら、やっと究極のローアングル撮影であり、犬の撮影では特に威力を発揮する「ノーファインダー撮影」の扉が開かれるのである。

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フルート吹きアンディ:これは地面に這いつくばり、きちんとファインダーをのぞいて表情から背景まで気を使い一眼レフで撮影したもの

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普通に撮ると:小型犬の場合、撮影者が立ったまま撮影するとどうしてもこのようになってしまう。これはこれで味わいはあるが、いつもこれだと物足りなくなるので、やはりローアングル撮影は必須。コンデジで撮影

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走りローアングル:同じ犬が走っている姿をローアングルで撮ったもの。名前は「ちゃま」写真の雰囲気がガラっと変わる

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とっさのノーファインダー:散歩途中ではじめて出会った犬がわたしに寄ってきたので、とっさにコンデジでノーファインダー撮影したもの。よい表情がうまくフレームに収まった。ただ瞬時のことなので、何が写り込むのか、背景には気が回らなかったが。


著者紹介

池野谷 健二(いけのや けんじ)
Editor, Photographer, Writer, DTP Director
湘南・鵠沼在住
ken [at] dogphoto.jp ([at] を @ に変えてください)

出版社勤務を経てから平成2(1990)年に独立。様々な編集・制作業務に携わり、20年以上にわたる雑誌編集長のキャリアも持つ。現在はフリーとして活動中。

1997年、ゴールデンレトリーバーのセナ(♂)を飼い始めたことがキッカケで犬の撮影を始め、2002年に2匹目のアンディ(♂)も家族の一員に。それからは愛犬が生活の中心にいるという生活となる。2010年4月、初代のセナが亡くなり、2011年3匹目のディロン(♂)が家族に加わり、現在は2匹のゴールデンとともに暮らしている。

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