犬ごころ、人ごころ


犬の写真を上手に撮りたいー1

2011年7月24日

このブログをはじめてから、早いものでもう7か月が経過した。そのためなのか、最近、犬の飼い主さんからよく聞かれることがある。

それは「愛犬の写真が上手に撮れないんだけど、どうすればいいの」という質問だ。

私はもともと写真を選ぶ側の人間でだった。それが犬を飼うようになって撮る側に立ち位置を変えた。詳しくはこのブログの第1回目に書いているので参照していただくとして、どの飼い主さんも、愛犬がかわいくて仕方がないはずで、私と同じように愛犬の写真を撮りたくなるのは極めて自然な欲求だから、私がこのような質問を受けるのも当然だろう。

でも、「こうすれば上手く撮れますよ」と簡単に説明できるぐらいなら、逆に誰だって簡単に撮れてしまうはず。簡単に説明できず、さまざまな知識から技術的なことまで、覚えたり、マスターしたりするその内容も多岐にわたるから、なかなか上手く撮れないわけで、実際、いろんな分野で活動しているプロと呼ばれるカメラマンでさえ、話をするとほぼ口をそろえて「犬の撮影は難しい」とつぶやくほど。だから、写真に素人であり、撮影にも素人の人が、愛犬の写真を上手く撮れないのは当たり前のことだから、別に恥じる必要もなく「仕方がないな」ぐらいに思っていた方がいいし、私も多くのカメラマンと同じで、犬の撮影はとても難しいと断言する。

そうは言っても、やっぱり飼い主さんは愛犬の写真を上手に撮りたいわけだから、前置きはそのぐらいにして、その方法を少し書いてみることにする。

まず、誰もが気になる器材だが、よくいるパターンなのが、愛犬の写真を撮るために、今まで一眼レフも、写真撮影そのものもほとんど経験がないのに、いきなり上級器材(デジタル一眼レフ/通称デジイチ)をゲットすれば、いい写真が撮れると思っているケースで、「よいカメラを持っている=上手に写真が撮れる」というわけではないことは説明しなくてもわかると思う。大切なことはその器材を使いこなすことで、ある程度使いこなすことができれば、今のカメラは性能が高いので、たしかにそれなりの確率で上手く撮れるようになるから、使いこなすということは怠らないようにしよう。

また、説明書をよく読んで理解することも大切なのだが、写真やカメラの知識がない人にとっては、用語の意味がわからないから、理解するのもかなり大変かもしれない。しかし、これをキッカケにして、そのあたりの基本的な写真用語や基礎知識を調べてみよう。写真を上手に撮るには避けては通れないことなので、面倒臭がらずに。

さて、多くの場合はコンパクトデジカメ(コンデジ)での撮影になると思う。このコンデジで上手に撮るにも、やはり使いこなすことが必須で、結局説明書をよく読んで、そのカメラの性能をよく把握することは避けられない。ただ、最近は「ペットモード」のような機能がよく備わっていたりするので、そういう機能は積極的に利用し、また「おまかせフルオート」の類いもかならずあるので、悩んだらこれを利用すればとりあえずは無難に撮れる。

なおこの種の話は、機種によって千差万別なので、ここではここまでにする。それよりも、写真を撮る上でたいへん重要なことであり、ほかではあまり言われていないことを少し書いてみようと思う。

それは、私の経歴と密接に関係していることなのだが、写真の腕前を高めたいならば、まずはよい写真をたくさん見ることと、その上、写真をセレクトするという行為をたくさん行うことがたいへん重要だと私は思う。もちろん見るならばほかのジャンルではなく、犬がベスト。よい犬の写真をたくさん見よう。(私も電子書籍の写真集を出しているので、よろしかったら見てください)。

たいていの人は、上手に写真を撮るというと撮影技術や使用機材など直裁的な項目に注目しがちなものだが、その前にもっと根本的、かつ深層的に重要なことは「よい写真とは何か」という、とても抽象的で、これという具体的な解答が存在しないことを、感覚として自分のなかにしみこませていく必要があるからだ。特に撮影する対象が犬の場合は、残念ながらけっして避けられないと私は感じている。

そして、見ること以上にその「よい写真とは何か」をしみこませていくことに、とても効果的なトレーニングが、写真をセレクトするという行為なのだ。仕事柄、私は見て選ぶという行為を、それこそ気が遠くなるほどたくさん行ってきたわけで、結局そのことが「よい写真とは何か」ということを、細胞のなかまで刷りこんでしまったわけである。

写真を選ぶという行為は、たとえば100点の写真のなかから10点を選ぶ場合、その10点が残りの90点よりも優れていると思われる部分を頭のなかで整理し、ひとつずつ比較しながら、優劣をつけていかなければならない。それは色味やピント、露出に始まり、写っているや瞬間だったり、犬の表情だったり、背景の具合だったり、全体的な構図や全体の印象だったりと、比較しなければいけないポイントは、じつに数多く存在する。もし、選んだものを自分以外の人(たとえば伴侶)に納得してもらう必要があるならば、その違いを言葉に翻訳して説明することも必要となるわけで、こうなると写真を「見て選ぶという行為は、一気にエネルギーと集中力を必要とする大仕事となる。しかし逆に、ここまでくると、いやがおうでも「よい写真とは何か」ということが自分のなかには確実に刷りこまれていくのである。

繰り返すが、写真を見て選ぶという行為は、すぐに写真の腕前に直結するわけではなく、ボディーブローのようにジワジワと確実に効いてくるもので、犬の撮影には絶対に必要ということは覚えておいてほしい。

さて、犬の撮影はプロも認めるほど難しいということは前記したが、もう少しそのことについても説明することにする。犬の写真撮影が難しい最大の理由は、相手には人間の言葉が基本的に通じず、こちらの意図も理解できず、動きが速くて、先もほとんど読めないということに尽きるだろう。だからまず、上手く撮影したいならば、犬の動きを止めた状態にして、撮影することになる。オスワリさせたり、マテをさせたり、寝ているときときに撮影することは、多くの方がすでに実践しているし、一般的な撮影パターンになっているのは当然だ。だからまずはこのようなときに撮影にチャレンジするところからはじめよう。

ただ、撮影するとき、多くの人が見落としている基本的なポイントがある。ひとつが光の向きや角度で、通常は犬の顔が陰にならないように、ちゃんと光を当てるようにすることが大切で、もうひとつのポイントが背景のチェックだ。オスワリした犬を撮るときときにファインダーや液晶を覗いてみて、後ろに何が写るかを必ずチェックしすること。ごちゃごちゃと余計なものがたくさん写っていたら、せっかくのよい表情も台無しになってしまう。だから、光の向きと背景を十分考慮してから、自分の愛犬をオスワリさせる場所をきめるようにしよう。これに注意するだけでちょっと写真はよくなる。

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動きが速く、予測不能な犬を撮影するなら、まずは動きが止まっているときからチャレンジしよう

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静止時撮影で忘れてはいけないポイントが背景。背景をこのようにシンプルにするだけで、写真のグレードがグッと上がる

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静止時撮影でのもうひとつのポイントが光の向き。基本的に顔には光が当たるようにしたい。この写真は注意すべき2つのポイントがクリアできていないあまりよくない例。背景が少々うるさく、顔が陰になってしまっている。光が当たり、背景がシンプルになる場所に、改めてオスワリさせて再撮影できればいいのだが


著者紹介

池野谷 健二(いけのや けんじ)
Editor, Photographer, Writer, DTP Director
湘南・鵠沼在住
ken [at] dogphoto.jp ([at] を @ に変えてください)

出版社勤務を経てから平成2(1990)年に独立。様々な編集・制作業務に携わり、20年以上にわたる雑誌編集長のキャリアも持つ。現在はフリーとして活動中。

1997年、ゴールデンレトリーバーのセナ(♂)を飼い始めたことがキッカケで犬の撮影を始め、2002年に2匹目のアンディ(♂)も家族の一員に。それからは愛犬が生活の中心にいるという生活となる。2010年4月、初代のセナが亡くなり、2011年3匹目のディロン(♂)が家族に加わり、現在は2匹のゴールデンとともに暮らしている。

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