犬ごころ、人ごころ


あなたはイヌだから-1

2011年6月11日

最近、手応えを感じているというか、否定しようがないたしかな実感と自信さえ持ちはじめていることがある。それは「オレはかなり早く、犬ごころのなかに入れるな」ということである。初対面の犬でも、比較的簡単になついてくれたり、積極的な犬の場合、会ってから10秒たらずで、私の顔や手をいきなりペロペロと舐めたり、軽くなでただけなのに、お腹を思いっきり出してしまう犬にもかなり出くわす。

先日もこんなことがあった。動物病院の待合室で真っ黒のメスのトイプードルと目が合った。その犬とはその後何度も目が合い、移動すると目で私を追っていたので、近寄って彼女をなでた。予想通りにすぐになついてくれたが、飼い主さんの膝の上にいる彼女の顔は、立っている私のちょうどおしりから大腿部の側面に位置していた。そのまましばらくなでていると、彼女は頭部から顔を、ビターッと押しつけるようにくっつけてきた。そのまま佇み頭をなでる私、かなりの圧力で押しつけてくる彼女。膝の上に乗せている飼い主さんも思わず苦笑いをしていた。キリがないので、私は「じゃあね、バイバイ」と声をかけてその場を離れた。

別の席で待っていたホワイト×ブラウンのボーダーコリーに、今度は私が興味を持った。ボーダーといえば黒×白がポピュラーだが、最近このツートンのボーダーをいつもの散歩場所でも見かけるようになっていた。そしてその子もどういうわけかすぐに私になついてくれて、この前、飼い主の男性に、
アンディパパの姿を見つけてしまうと、もう行きたがって大変なんですよ」
と言われてしまった。そんなにその犬と濃密で長い時間を過ごしたわけでも、もちろんオモチャやオヤツをその犬に使ったこともないのだが、たしかに遠くから見ている視線を感じ、そちらを向くとその犬の姿があったことが2回はあった。そしてこちらに来ると喜びを全身で表現し、すぐにそのボーダーはお腹を出した。

最近そんなこともあったので、待合室にいるボーダーに私は興味を持ち、その犬の前でしゃがんでその犬にそっと触れた。「オスですか?メスですか?お名前は?」など犬飼い的世間話をしながら、私は彼女を(そのボーダーもメスでした)をなでていた。すると、フセをしていた彼女は身体を起こし、そして私の顔をいきなり舐め出した。それもベロベロではなく、少しはにかみながらといった趣きで、おしとやかにペロッ、ペロッといった感じで、正直、私は「この娘カワイイ!」と思ってしまった。


もちろんこのワンコたちは、みんな人間のことを信頼し、大好きだったり、性格が甘えん坊だったりするからなのだが、そうではない犬のときでも、かなりのスピードと確率で「犬ごころ」との接触を果たせている。

家のなかでも外でもそんな光景をよく目にしている相棒の女性は、私のことをこう表現する。
「この人は犬だから」
その犬の飼い主が「あっ!珍しいわね、知らない人になつくなんて」とつぶやくと、彼女は必ずその決まり文句をその人に言う。
「この人、人間じゃなくてイヌですから」
そうなのかな? 私は犬なのかな?

小さいときから犬を飼いつづけてきたたわけではないが、セナを飼いはじめる以前の、彼の母犬や父犬と出会った18年もまえから、書いてきたようなことの片鱗を、私自身で感じていた。セナの母犬は、どういうわけだが私の家に来ると、よく玄関でウレション(うれしくておもらしすること)をした。現在とても仲よくさせてもらっている散歩仲間の男性からは、彼が飼う気が強くて警戒心も強いメスのトイプードルとの初対面のときにいきなりなついて以来、
「セナパパは何かもっているんだよ」とずっと言われ続ける。
私のどこが犬ごころと同期するんだ。私は何を持っているんだ?!

犬の写真を撮りはじめてからは、本腰をいれて、私自身でこのことについて、ずっと真剣に考察し続けている。実際にこの私の特徴は、写真を撮る上でも大いに役立っており、苦労せずに目線をレンズに向けてくれたり、その犬が自然にふるまってくれる機会も多いので、いいシャッターチャンスにはかなり恵まれていると思う。でも、ここで書いている「犬ごころ」とは、いったい何なのか?! 書いている本人もまだぼんやりとしか、わかっていないのが実情である。

Photo
ラブラドールのマルちゃん。子犬だからカメラ慣れしてなくても不思議ではないが、カメラを持ってそばに寄ってもおとなしくしてくれたのも、私が何か持っているから?

Photo
スタンダードプードルのモモちゃん。私にこころを許してくれているので、こちらが這いつくばって接近しても、モデルのようにいい目線をこちらにくれた

Photo
バーニーズマウンテンドッグのティナちゃん。この犬種がこんなにハイパーアクションを見せるのは珍しい。それにしてもこんなときにこちらに目線をくれなくてもいいのに


著者紹介

池野谷 健二(いけのや けんじ)
Editor, Photographer, Writer, DTP Director
湘南・鵠沼在住
ken [at] dogphoto.jp ([at] を @ に変えてください)

出版社勤務を経てから平成2(1990)年に独立。様々な編集・制作業務に携わり、20年以上にわたる雑誌編集長のキャリアも持つ。現在はフリーとして活動中。

1997年、ゴールデンレトリーバーのセナ(♂)を飼い始めたことがキッカケで犬の撮影を始め、2002年に2匹目のアンディ(♂)も家族の一員に。それからは愛犬が生活の中心にいるという生活となる。2010年4月、初代のセナが亡くなり、2011年3匹目のディロン(♂)が家族に加わり、現在は2匹のゴールデンとともに暮らしている。

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