一人企業


ソーシャルメディアを使ったリクルーティング(後編)

2010年9月30日

ソーシャルメディアを用いたリクルーティングについて、前回と前々回を通じてメリットとデメリットについて紹介してきました。今回はリクルーティングへのソーシャルメディアの具体的な活用方法を考察してみたいと思います。

ではどうするべきか?

ソーシャルメディア上で取得できる情報は非常に多岐に渡り、求職者に関する情報は大量に存在しています。気をつけるべき点について、前掲のSharlyn Lauby氏は「正しい理由と目的を持ってソーシャルメディアの利用に乗り出すべき」と指摘しています。

また、リクルーティングをする際に「ソーシャルメディア上に掲載されている情報を考慮する場合には、応募者が不快にならないようにケアする必要がある」と指摘しています。取得できる情報がすべてオープンであるとはいえ、プライベートまでも見えてしまう可能性があるため、そのような情報を無視する覚悟がないと使いこなすのが難しくなります。

しかし、一方で、新しいチームメートを迎えるにあたり、趣味や興味が近い人を見つけ出せる可能性もあります。そのため、たとえば小規模のスタートアップ企業などにはメリットかもしれません。それは、チームワークを高めるのに役立つからです。

すべて見られている?

求職者の立場からすると、ソーシャルメディア上で日常的に行っているコミュニケーションが、求人企業からすべて見えてしまうということが、マイナスなように感じることがあるかもしれません。では、見られたくないのであれば、そもそも、掲載しなければよいのでしょうか?

筆者の考え方は少し違います。ソーシャルメディア上でのコミュニケーションは、これまで国内の情報メディア上で一般的だった「匿名」「偽名」「現実世界とは別人格」でのコミュニケーションを目指したものではないと考えています。

ソーシャルメディア=リアルのコピー

ソーシャルメディアは、現実世界におけるソーシャルな活動をサポートすることが基本的な目的です。匿名で他人を罵声するための、「現実世界のはけぐち」といった場所ではありません。そのため、情報はオープンであることが前提です。そこでわかることは、就職のためのインタビューを受けていて伝わることや、友だちと話をしていて伝わること、さらには、 あなたが街を歩いていて一目でわかること(iPhoneを使っている、移動の際に自転車に乗るなど) と大きく変わりはないのです。

リクルーティングをする側は、ソーシャルメディア上に不思議で価値のあるなにか、つまり、採用にプラスになる新しい情報が眠っていると錯覚せずに、現実世界におけるリアルな情報が、テキストや画像やビデオを含むマルチメディア形式で記録されているだけだということを認識する必要があるのです。

そして、現実世界に目を向けてみると、目の前に広がる町並みや、風の音、空の青さや夕日の美しさ、さらに、あなたの愛する人の優しい微笑みに較べたら、ソーシャルメディア上で得られる情報は、リッチ(潤沢)というにはあまりにプア(貧困)過ぎる、極めて限られたデータでしかないことに気づかされます。

すべては使う人の意識次第

このこと、つまり、そこには現実世界のコピーのログしかないということ、そして、現実世界にこそ大事な情報がたくさんあることに気づき、明確な目的と理由とともに覚悟をした上、ソーシャルメディアを上手に活用すれば、大きな武器になることは間違いありません。ここでは、コンピュータが本当の意味で現実世界における意思決定をサポートしてくれるのです。

仕事にプライベートな情報や人格は関係ないですか? そうであるならば、そのような情報のみを考慮するようにして、ソーシャルメディアを活用すればよいのです。あるいは、仕事を一緒にする仲間はビジョンや趣味や興味が近いほうがよいですか? あなたの会社がそのようなカルチャーを持っているならば、それを考慮して、ソーシャルメディアを活用すればよいのです。たとえば、筆者の一人企業では新しいメンバーを迎える際に、ロードバイクの週末の長距離トレーニングやランチタイムライドを一緒にできる人は大歓迎します。

Speak the language they speak.

求人や求職の話を離れてあらためて俯瞰してみると、私たちの毎日の生活はソーシャルメディアに占有されているということがわかり[1]ます。ここには、たくさんの現実世界の記録(ログ)が残されていて、上手に活用すれば、効率を上げたり、コストを下げたり、気軽なコミュニケーションをしたりできるのです。

もちろん、今後はソーシャルメディア上でのリクルーティングについては、さまざまなアプローチを試しながら、あるべき姿を探っていくことが重要です。そのためには、社会全体としての合意形成を待つよりは、さまざまなアプローチから実践的に実証していくことが重要だと、筆者は考えています。

一人企業では、ソーシャルに働くためのあり方について、どのようなあり方がよいのか、理論と実践[2]両面から探求していきます。

最後に、リクルーティング(もしくは就職・転職活動)にソーシャルメディアを使うのはいったいなんのためなのかということについて再確認するために、Jennifer Van Grove氏の言葉[3]を引用して今回の投稿を締めくくりたいと思います。

“Future COE should speak the language of the people — social media.”

「これからの企業のトップは、人びとの共有言語である「ソーシャルメディア」を使いこなそう!」

参考文献

  1. [1] TechCrunch Japan、「溢れんばかりの受信箱が「休日」という概念を消し去ってしまった話」
    http://jp.techcrunch.com/archives/20100902xobni-study/
  2. [2] Dagg.ly for Social Recruiting, http://dagg.ly/, Individual Company
  3. [3] Mashable, “How CEOs Will Use Social Media in the Future,” http://mashable.com/2010/08/30/ceo-social-media-future/

著者紹介

高橋雄介

高橋雄介 (たかはし・ゆうすけ)

1980年生まれ。2003年 慶應義塾大学 総合政策学部卒業、2005年慶應義塾大学 大学院政策・メディ ア研究科修士課程修了。2008年同大学院後期博士課程単位取得退学。博士(政策・メディア)。2005年より同大学院研究員として、知識ベースシステム、マルチデータベース、ビジュアリゼーション、教育およびキャリア開発におけるデータベース利用に関する 研究開発 に従事(~2009年)。2010年11月、株式会社一人企業を創業。2013年2月、米国カリフォルニア州Mountain ViewにてAppSocially Inc.を創業し、CEOに就任。専門は、データベース、知識ベース、マルチメディアデータベース、顧客開発、および、 グロースハック。2013年4月より、米国シリコンバレー在住。

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