d beauty of 9ja ― 魅するもの、ナイジェリアから


姉妹

2011年11月5日

2009年12月4日 イフェ モダケケ地区の下宿にて

11月とは思えないほどに汗ばむ陽気の午後、自動販売機のまえで立ちどまって選んだのはパイナップルジュースだった。甘くて濃い果汁をストローで吸い込みながら思い出したのは、いまにも消えそうな声で妹が口にした「パイナップル……」のひと言。

あの日、電話をすると妹はマラリアで寝こんでいた。「何なら食べれる?」とたずねて、果物屋さんへ寄って家へ駆けつけた。でも居間で旦那さんや息子や友だちとDVDで映画を観ながらとても元気そうにしている姿を見て、気が抜けた。足もとにたまっていた洗濯ものの心配から将来の夢の話までしゃべりつづける妹と、窓の外が濃紺一色になるまで一緒にいた。

末っ子のわたしを「お姉ちゃん」と呼ぶ唯一の人、甘えてばかりのわたしが甘えさせてしまう世界でただひとりの妹、ウチェ。砂ぼこりのバス通りを、かしましい市場を、路地裏の凸凹を、きょうもおなかの子と一緒にゆっくり歩いているのだろうか。胸が満たされると、空のパックをぎゅっとにぎってビルの谷間をまた歩きはじめた。

Photo
夕食後、停電していない隙にノートパソコンでDVD(映画)をたのしむウチェ(左)と、リラックスするウチェの実姉トイン。2009年12月4日 イフェ モダケケ地区の下宿にて

(毎週土曜日更新)



著者紹介

緒方しらべ

緒方しらべ (おがた・しらべ)

1980年島根県に生まれる。18歳まで福岡県で育つ。ロンドン大学東洋アフリカ学院(SOAS)にて学士課程をへて、2005年に同大学院修士課程を修了。2007年より、総合研究大学院大学文化科学研究科にて博士後期課程に在籍。

2003年以来ナイジェリアでフィールドワークに従事し、造形活動にたずさわる人びとをテーマに研究をおこなっている。

(株)清水弘文堂書房

TEL 03-3770-1922 FAX 03-6680-8464

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