d beauty of 9ja ― 魅するもの、ナイジェリアから


2011年1月22日

ケージの扉に鼻先と前足をはげしくあてながら、胸をおどらせて吠える。大好きなトペが近づいてくる。開かれた扉から飛びだして、トペのまわりをくるくるまわって離れない。笑って、跳ねて、あお向けに寝そべってみせる、ペドロ。

この町の大きな家のほとんどに犬がいる。武装強盗や空き巣を恐れ、みな番犬を飼うのだ。広い敷地内で放し飼いをする、あるいは、日中はケージのなかに入れて、暗くなるころ敷地内で放す。ペットというより門衛。散歩に連れられている犬はほとんど見かけない。道で見かける動物といえば、ヤギとニワトリとヒヨコ。

下宿先のペドロも番犬にちがいない。「犬はくれぐれもケージに入れておいてくれ」と、訪問者たちは念を押す。セキュリティには役立つけれど、よそ者を嫌う獰猛で臭いペドロはみんなに嫌がられている。それでも、飼い主にだけは、あの笑顔を見せるのだった。

Photo
ペドロの体をシャンプーで洗うため、片耳ずつていねいに押さえ、頭から水をかけようとするトペ。ペドロをおとなしくさせて洗うことができるのはトペだけだ。いまはもうトペは別の下宿に住んでいるが、3年まえ、この家にやって来たペドロを誰よりもかわいがったのはトペだった。
2008年11月2日 イフェ、モダケケ地区の下宿の庭にて

(毎週土曜日更新)



著者紹介

緒方しらべ

緒方しらべ (おがた・しらべ)

1980年島根県に生まれる。18歳まで福岡県で育つ。ロンドン大学東洋アフリカ学院(SOAS)にて学士課程をへて、2005年に同大学院修士課程を修了。2007年より、総合研究大学院大学文化科学研究科にて博士後期課程に在籍。

2003年以来ナイジェリアでフィールドワークに従事し、造形活動にたずさわる人びとをテーマに研究をおこなっている。

(株)清水弘文堂書房

TEL 03-3770-1922 FAX 03-6680-8464

link toお問い合わせ送信ページ

RSS Feed RSS