清水弘文堂書房マーク 清水弘文堂書房 SHIMIZU KOBUNDO

「難民」のタグが付いている記事

プロローグ その2

2010年7月15日

カレンニー難民キャンプ3(当時)の高校生からの手紙(詳しくは本文参照)
写真: カレンニー難民キャンプ3(当時)の高校生からの手紙(詳しくは本文参照)

初めての滞在

「首長族」と呼ばれる彼女たちは、みずからのことを「カヤン」と呼ぶ。私がジャパンポ(日本人)であるように、自分たちは「カヤンポ(カヤン人)」であるという意識がある。そんなカヤンの人びとの故郷は、隣国ビルマにあり、自分たちは難民であるという。村の雰囲気はいたって平和だし、難民と言われてもピンとこなかった。ただ、滞在にあたり、安全上の理由から、観光村で寝泊まりしてはいけないと言われていた。だから私の寝床は、観光村から「徒歩30歩」のタイ人が居住するエリアの村長の家となった(「村が危険」とされた理由は、ずいぶん後から知ることになる)。

村での毎日は、自分なりに「カヤン・日本語辞書」をつくりつつ、少しずつ彼女たちの「首輪の謎」と「観光客の相手をすること」への認識を聞き取ることにした。当時10歳の少年につれられて、隣の観光村(といっても山道を私の足で1時間ほどかかる)のフェプケン村へ遊びにいったりもした。

この少年は、自分たちのことを指して、「カヤン」と言うこともあれば、「カレンニー」と言うこともある。「カヤンなのかカレンニーなのか、どっちなんだ」と問うても、「両方」というような答えが返ってきて要領をえない。観光業の謎に加えて、彼らの民族意識の所在はどこにあるのかも私を悩ませた。

詳細


プロローグ その1

2010年6月30日

団体の観光客を迎えるときや、結婚式で踊りが披露される。このなかにはすでにリングを外した女性もいる。2004年、メーホンソーン県のカヤン観光村にて。
写真:団体の観光客を迎えるときや、結婚式で踊りが披露される。このなかにはすでにリングを外した女性もいる。2004年、メーホンソーン県のカヤン観光村にて。

「首長族」観光へ

2001年2月、私は大学の友人に誘われてタイにいくことになった。出発の10日前に誘われた私は、まだパスポートも持っておらず、慌ただしく出国の日を迎えた。そんな急な誘いでも、私がタイに向かったのには理由がある。渡航の目的が、「首長族」を見にいくことだったからだ。幼いころ、テレビで「首長族」を見たときの衝撃。「自分自身の目で見てみたい」という興味が、私をタイへと向かわせた。

私たちが訪れたのは、タイ北西部メーホンソーン県にあるファイスアタオという村である。いまでこそ、丁寧に「あと何キロ」という看板が目につき、村へとつづく道路は舗装されているが、当時、道路は舗装されておらず、車がパンクしそうな強い揺れを感じながら村へと向かったのを思い出す。舗装されていない道路、見慣れない木々が生い茂る風景は、私たちに「秘境」を感じさせるのに十分だった。

詳細


いつか、どこかへ ドォッカーデー

2010年6月15日

メーラ難民キャンプ。最大のビルマ難民キャンプで、一時期、人口は5万人を超えていた
写真: メーラ難民キャンプ。最大のビルマ難民キャンプで、一時期、人口は5万人を超えていた

どこの国民でもない人たち

世界の全人口の216人に1人。この数字はなにを意味するのか、ご存じだろうか。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、2007年末の段階で、同事務所が把握している懸念対象者 [1] の数を3167万人としている。そのうち、自国の外に逃れた難民数は1139万人、自国内にとどまる国内避難民の数は、2027万人にのぼる。

世界の人口約67億人のうちの3167万人、つまり、216人に1人は、「どこの国民でもない人」の数である。この数は、実際にはさらに多いと思われる。それにもかかわらず、私たちは、この境涯にある人のことを、どれだけ知っているだろうか。テレビに映し出される「難民」像は、本当なのだろうか。私もまた、彼・彼女らに出会うまでは、なにも知らなかったひとりである。

このブログでは、私がひょんなことから調査・研究することになったタイ・ビルマ [2] 国境の難民の日常を綴っていきたい。

詳細


久保忠行さん新ブログ「いつか、どこかへドォッカーデー―タイ・ビルマ国境からみる難民と紛争」

2010年6月11日

6月は新しい風が吹く。

新連載ブログのおしらせです。神戸大学大学院総合人間科学研究科博士後期課程在籍中の久保忠行さんの「いつか、どこかへドォッカーデー―タイ・ビルマ国境からみる難民と紛争」を開始します。初回更新は6月15日(火)を予定しております。その後は各月15日、30日の月2回連載。「ドォッカーデー」ってなんでしょうかね。タイトルの意味も含めて、第1回目を楽しみにしてください。