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式に集う
2011年10月15日
太鼓の音が鳴り響き、祝賀モードで家は華やかにごったがえしている。誰もが歌い踊り、笑っている。何種類もの香水と宴の料理のにおいが漂っている。まばゆいばかりの視線とフラッシュを浴びて、花嫁は座っている。紅と黄金の錦につつまれ、プラチナの目もとでにじむ涙も、微小なクリスタルの汗も、かがやいている。たくさんの人たちから祝福を受けながら、メディナはいま、結婚式を挙げている。
ごみがいざなう可能性
2011年10月8日
ごみのなかを歩くと感じる、人間の営みと息吹。街のあちらこちらで蒸留酒のサチェットを踏んでは思い浮かべる、昼夜酒を飲む人たちの姿。足元に散らばる同じせっけんのパッケージを何度も見ては思う、人びとの趣向と流行。投げ捨てられたマンゴーの種やトウモロコシのしんにつまずいて伝わってくる、季節の味わい。「ごみはくずかごへ」といったような、「近代型環境保全国家」ではなかなかできない発見や発想のプロセスが、9jaにはある。
ごみのゆくえ
2011年10月1日
この住宅地でごみの収集がはじまったのは2010年。かつてみんなが「ごみ捨て場」として利用していたいくつもの場所に、地主など金銭的に裕福な人たちがあたらしく家を建てるようになったからだ。ポイ捨てする場所のなくなったこの住宅地では、週1回、1袋(45リットルのごみ袋相当)100ナイラ(約50円)で個人の収集屋がごみを引き取るようになった。収集屋はリアカーで各家庭をまわってごみと現金を受け取ると、ごみを車に積んで郊外の空き地や繁みへ捨てに行く。
きみはやらないのかい?
2011年9月24日
この街で暮らすアーティストたちを訪ね歩き、作品をつくっているところを見たり、作品にまつわる話を聞き、ライフヒストリーをメモする。そんな人類学のフィールドワークをしているある日、ひとりのアーティストから言われた。「きみは話を聞くのが好きだね。彫ってみたくはないのかね?」
木彫家の彼は、つづけて言った。
「やってみたらいいよ、小さいものならそんなに力もいらないから」
「んー、今度やってみます」
と言ってメモを取りつづけた、あの日のわたし。
なんで彫刻刀を即座に握らなかったのだろう? 言葉にできない、口では伝えられない、自分の体で感じないとわからないことがあることを、ペンとノートを持ったわたしに教えようとしてくれたのかもしれない。
人びとを観察する。人間の暮らしを、生き方を記録して、論じる。
「文化って、社会って、なんだろう。人間って、なんだろう」
そこへすこしでも近づこうとしているのが人類学者と呼ばれる人たちであるのなら、見ていても、調べても、共感しようとしても、わからないことがたくさんある。周りを見ず、自分にだけ集中してやってみることもきっと必要なのだ、そこへ近づくために。
アフリカの衣
2011年9月10日
糊、蝋、糸で防染して染色された、藍一色や大理石模様の染物。綿の生地にメタリックな化繊でハイライトされた織物。工場の大型機械によってプリントされた、原色でユニークな柄の布。レース編みにスパンコールの散りばめられたカラフルな布。どれもナイジェリアの伝統的・国民的な布である。いまでは国産品だけではなく輸入したものを利用することも多いが、いずれも日常から冠婚葬祭時まで、国民にひろく親しまれている。布は4.5~5.5メートル単位で売られ、人びとはそれを仕立屋に持って行き、オーダーメイドの服をつくる。
「ダディ、エビンパミ」
2011年9月3日
高い声で犬が吠えて、扉をドンドンたたく音。午後3時過ぎ、娘たちが学校から帰ってきた。「ただいま」と言いながらアトリエに入ってきて、一言。
「パパ、おなかすいた」
だから女は……
2011年8月13日
「カネのある男のところをハシゴする。いまの時代、ナイジェリアの女のほとんどは不誠実なんだ」「男みたいに遊びまわるうえ、男を傷つけて去る。綺麗な格好して中身はひどい女ばっかり」「いまからシュガー・ダディ(援助交際相手)に会いに行くの。顔なんてどうでもいいわ。帰りにちゃんとお小遣いくれるんなら」「あの店番の女、ぼくに家族がいるって知ってて誘ってくるんだよ。ぼくは断ってる」「だから女はごめんだ。ぼくたち兄弟はみんな結婚しないんだ、ちゃんとしたひとが見つかるまで」
ウーマナイザー
2011年8月6日
「いまわたしに言い寄ってくるのはみんな既婚者よ」「一夫多妻制が認められるなんておかしな話だわ。妻たちを平等に愛せるわけがないじゃない」「一夫多妻主義じゃない男性のほうが、もっとたくさん『妻』を持っている場合さえあるのさ」「父親がよそで子どもをつくって、子どももその母親も家に連れてきて一緒に暮らすってのはよくあることよ」「わたしはすでに65歳のとき、精子の活動を止めたんです。ナイジェリアの男性としてはめずらしいことなんですけどね」