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同級生

2010年10月30日

日曜の朝、美術学部の様子を見に行くと、ゴケが課題にとりかかっていた。

2003年雨季、ボラデさんの弟子だったゴケにはじめて会った。当時彼は、アトリエの奥で作品にヤスリをかけたり、留守番したりしていた。同い年だから、同級生のように色いろな話をした。

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ヘアスタイル

2010年10月23日

美容師はトインの自毛をすべて編みこみ、これから、針(頭部の頂点付近、編みこまれた髪に刺してある白っぽい線)と黒い糸(針から垂れている黒い線)でその自毛につけ毛を縫いつけていく

9jaの若い女性たちは、髪型のことをつねに意識している。

彼女たちの髪には生まれつき細かいウェーブがかかっており、それが絡み合いながら上向きにふくらむように伸びる性質をもっている。だから、伸びてきた髪は編みこむか、専用のクリームを使って、ふくらみを押さえながら髪を下向きになでおろして束ねている。編んだ髪は2週間をめどにほどき、洗って、またあたらしく編みなおす。

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オリジネーター

2010年10月16日

依頼された作品を制作している「オリジネーター」

「アーティストってのは、なんでも自分で創りだす。なんでもできるんだ」
自分自身を信じている。だからそう自分に名づけた、「オリジネーター(創造する人)」と。

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Please call me. I love you.

2010年10月9日

“Please call me. I love you.” (「電話ください――あなたのこと思っています」)

真昼の太陽が照りつけて、車内は蒸れていく。左右に座る人たちと密着した太ももは汗でにじんでいく。メール着信音が鳴りはっとして、手さげ袋をまさぐる。
“Please call me. I love you.” (「電話ください――あなたのこと思っています」)
つかんだ携帯に表示された、「いつもの」テキスト・メッセージ。渋滞停車中の満員バスのなか、ひとりほほえむ。

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海を渡り、陸をゆく

2010年10月2日

2010年8月14日 イフェからイバダンにつづくバイパスにて

発車するやいなや、乗客全員が大声で祈った。
「神よ、どうかわれわれを無事に目的地へ連れて行きたまえ」

メーターの針は、時速90キロと110キロを行ったり来たり。風でおくれ毛が頬にあたって痛む。エンジンの上に座る太ももの裏は汗でぐっしょり。運転手がギアチェンジするたびに、シフトレバーと彼の右腕がわたしの左膝をつつく。走行距離は25万9027キロメートルを越えていく。

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まだ見ぬ孫たちへ

2010年9月25日

アブジャの司法学校に通うトインが、ラゴスの実家で暮らす息子のロティミを連れ、イフェのわたしを訪ねてくれた。ふだんは離れ離れに暮らす親子が一緒に過ごした、つかの間の3日間だった。

結局ね
一緒やったんよ、遠い異国の地へ行っても
みんながそう
嫉妬したり、抱きしめたり、絶交したり、祈ったり
うらやましい、愛おしい、腹立たしい、元気でいてほしい

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アーティストたちよ

2010年9月18日

金属の彫刻作品に「しわ」をよせ、かたちをつくっていくエル・アナツイ

降りやまない雨のなか、ナイジェリアから帰国した。残暑の厳しい日本にいて、9jaの朝の肌寒さを思い出せない日もあった。目が覚めてあの肌の感覚をとりもどす今日日、ひとりのアーティストが来日した。

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ココ

2010年9月11日

地面いっぱいにココを広げる労働者。2010年8月4日 イフェ、イロデ地区のココ集荷場にて

「個々」ではなく、「此処」と発音してみてもらえるだろうか。
そう、それが「ココ」のイントネーション。チョコレートの原料であるカカオのことを、「ココ」とナイジェリアの人たちは呼ぶ。輸入食品店にでも行かない限りチョコレートの姿を見ることはないけれど、ナイジェリアのココの輸出量は、世界でも五本の指に入る。

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父さんと母さん

2010年9月4日

アーティスト、パパケイの描くポピシとモミシ(ナイジェリア英語で、「父さんと母さん」の意)の肖像画。ラゴスの写真館で1976年に撮った、結婚してまもないころのふたりの写真を貸りて、それをもとに、パパケイに油彩で描いてもらった。ナイジェリアでは、アーティストに依頼して、肖像写真を肖像画にしてもらい、居間に飾ることがしばしば好まれる。贈りものとしても、価値の高いものとして喜ばれる。2010年7月22日、イフェ、モーレ地区のパパケイのアトリエにて。

「そうね、ポピシはモミシをすごく愛してたわ」
二女の大きな丸い目は、微笑みで細くなった。5年前、大学生だった彼女の下宿のテレビの上には、額縁に入れられたポピシの小さなモノクロ証明写真。いま、その写真は嫁ぎ先の家の鏡台に。

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染みた果汁

2010年8月28日

乾季の深まる1月から3月が旬の果物、カシュ。えぐみが強く、同時にハチミツのように甘い。果汁が「「服にた垂れないよう」」気をつけながら、、まる丸かじりして食べる。うすみどり色のへたを煎ると、割ってなか中からででてくるナッツ(カシュナッツ)も食べることができる。2009年1月25日、イフェ、モダケケ地区の下宿にて

どうしようもないえぐみが、びりびりと舌にくる。
「(中国語をまねて)チンコー! チンチョン!」もうやめて。「男か? 女か?」そんなにじろじろひとの体を見んでって。「今日はなにを持ってきてくれたの?」毎回持ってこれるわけなかろうもん。「オロリブルクッ(腐った頭)! ぼーっと歩いてんじゃねぇぞっ」そっちがバイクで蠅みたいに飛び交うけんやろ。ああもう、血がでてきたやん。

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日本で生まれたあんた、9jaで生まれたわたし

2010年8月21日

日本で生まれたわたしとナイジェリアで生まれたトイン。昨年11月に撮った写真をもとに、アーティストのパパケイが鉛筆で紙に描いてくれた。2010年6月17日 イフェ、モーレ地区のパパケイのアトリエにて

あんたはナイジェリアで生きていけないわね。ここでサバイブするにはもっと自分勝手じゃなきゃいけないの。そんなんじゃあんたは利用されちゃう。わたしはそれがゆるせない。

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祈り、とどろく

2010年8月14日

日曜礼拝で、大声をあげて祈りつづけるキリスト教信者たち。2009年10月25日 イフェ、イロデ地区のプロテスタント教会にて

大声をあげ、こぶしを振りあげて、全身をふるわせながら、祈り、歌い、踊るみんな。わたしはただぼう然とする。熱い。天井につるされた扇風機は、その羽根が見えるほどにゆっくりとしかまわらない。60人の汗がまじった熱気と鳴り響く祈りで空気は重く、気が遠のいていきそう。息苦しい。立ちっぱなしで足がむくみ、薄くて硬いプラスチックの椅子に腰をおろす。痛い。日曜礼拝がはじまって、すでに5時間半が経っていた。

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