犬ごころ、人ごころ


ドッグイヤー/冷徹な運命①

2011年1月5日

最高の出会いが、別れへのカウントダウン

あらためて書くほどのことではないが、子犬はなぜあんなにカワイイのだろう。この世にこんなにカワイイ存在があっていいものかと、信じられないほどだ。それは別に犬に限ったことではなく、人間の子どもも含めて、どんな動物でも子どもや赤ちゃんはめちゃくちゃカワイイ。しかし同時に、大変な苦労と労力が必要な育児や世話といったのも例外なくついてきてしまうのも事実。それによって精神的にも肉体的にもストレスは確実にたまる。

それでも子犬と過ごす時間は、悦びと輝きに満ち溢れている。そう感じさせてくれるのは、やはりこの圧倒的な可愛さがあるからだろう。言ってみればこの子犬の可愛さは、イタイケな彼らが生存していくために神が与えた能力であり、最大の武器だと思う。この可愛さによって飼い主は飼い犬に対してどんどん愛おしく思うようになっていき、両者の間には深いきずなと愛情が育まれていく。自然の摂理であろう。

だから逆に、素直にカワイイと感じないとしたら、その人は自分の感性や感覚を少し疑った方がいいと思う。どこかに歪みや軋みなどが生じている可能性があるかもしれないからだ。

さて、長男の「セナ」がわが家に来たのは生後2か月、次男の「アンディ」が来たのは生後3か月経った頃だった。特にセナの場合は、私にとって生まれて初めて迎える子犬であり、人間の子どもも含めて育児未経験の中年オトコにとって、それは上へ下への大騒ぎ。我が家は自宅兼オフィスなので、相棒の女性と2人で仕事も含めて普通の日常生活を過ごしながら、24時間体勢で彼の面倒を見た。

しかし、セナのドタバタ子育てが始まった頃、ふと彼の無邪気な寝顔を見ていたときに
「ほんとうにカワイイな〜。食べたいぐらいだ」
とお決まりの想いの後に、
「でもオレより先に逝ってしまうんだよな」
という余計なフレーズが唐突に頭のなかを駆け巡ってしまった。それまでの甘く満たされた気持ちは吹き飛ばされ、反対に猛烈に胸が締めつけられてしまったのだ。

そう、このセナとの最高の出会いは、同時に別れへのカウントダウンが始まったことをも意味するという重たい現実を、はっきりと意識した初めての瞬間だった。それまでは、知識として持ってはいても、子育てなどに忙殺され、また楽しさに満たされていたから、その現実をあまり明確に意識することはなかったのだ。

当然、その時からこの重い現実は、ずっと私のなかに棲みついた。もちろん今でも。

最近は犬も長寿になってきたとはいえ、犬の寿命は長くて15年、ゴールデンのような大型犬はそれよりも短いことが普通だ。また、“ドッグイヤー”と呼ばれるように、犬は人間の1歳が6歳とも7歳ともいわれるほど、素早く時間が過ぎていく。

幼く、イタイケで、たった今、この世に生まれてきたのに、私の終わりよりも彼らの方に、早くそのときが訪れてしまうという重い現実、冷徹な運命。理解していてもこれを自分のなかに受け入れることは、カワイイと思えば思うほど、そう簡単なことではない。

犬のクローンに成功したというニュースが報じられると、私の相棒の女性は真剣に彼のクローンが欲しいと言い出すほどで、この冷徹な運命の受け入れは永遠の重い命題であり、巷間言われるペットロス症候群などにも通じるところである。

結局私は、その時からこの重い現実をしっかり自分のなかに棲まわせようという覚悟を決めた。そしてそのことによって、自分の内面でさまざまな変化が起こりはじめたことも事実である。


著者紹介

池野谷 健二(いけのや けんじ)
Editor, Photographer, Writer, DTP Director
湘南・鵠沼在住
ken [at] dogphoto.jp ([at] を @ に変えてください)

出版社勤務を経てから平成2(1990)年に独立。様々な編集・制作業務に携わり、20年以上にわたる雑誌編集長のキャリアも持つ。現在はフリーとして活動中。

1997年、ゴールデンレトリーバーのセナ(♂)を飼い始めたことがキッカケで犬の撮影を始め、2002年に2匹目のアンディ(♂)も家族の一員に。それからは愛犬が生活の中心にいるという生活となる。2010年4月、初代のセナが亡くなり、2011年3匹目のディロン(♂)が家族に加わり、現在は2匹のゴールデンとともに暮らしている。

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