d beauty of 9ja ― 魅するもの、ナイジェリアから


時代が変わっても

2011年12月3日

かつてこの土地では、ヨルバの神々をあがめる信仰のために盛んに木が彫られていた。儀礼のための道具や太鼓、神像や祠の柱にも、人物や動物の具象的な像をあしらった装飾がほどこされていた。19世紀にイスラム教とキリスト教が布教するまえのことだ。

木彫の需要は20世紀半ばにはどんどん減っていった。しかし躍動感とユーモアあふれるヨルバの木彫は国内外の一部の人びとを魅了しつづけ、わずかとなったつくり手たちは彫ることをやめなかった。なかでも1940年代からカトリック教会の装飾として依頼を受けるようになったことは、主題こそそれまでとはちがうが、同じ木をつかって、同じスタイルで彫るという意味で、ヨルバの伝統を継続させるきっかけとなった。けれども、木彫づくりは以前のように盛んにはならない。

それでもいま、毎日彫りつづける人たちがいる。
「彫ることは体の一部みたいなもんだから」
「祖父の教えをただ受け継ぎたくて」
――そう静かに口にする彼らのそばで、時代が変わっても変わらないなにかを、見つけたい。

Photo
教会から依頼された十字架とキリストの像を彫り終えた木彫家のローレンス・アヨデレ。かつて人びとの生きるささえでもあった土着信仰は、現在では、「昔の風習」どころか「危険なもの」とすら言われるようになった。その背景には、いけにえとして人の命が捧げられることがあったり、憎しみや金銭的利益のために信仰がつかわれるようになったことなどがある。しかしもちろん、善のために、そして先祖から伝えられてきた伝統を守るために、現在でも土着信仰を捨てない人びともいる。
2009年10月31日 イフェ アジバンデレのアヨデレの工房にて

(毎週土曜日更新)



著者紹介

緒方しらべ

緒方しらべ (おがた・しらべ)

1980年島根県に生まれる。18歳まで福岡県で育つ。ロンドン大学東洋アフリカ学院(SOAS)にて学士課程をへて、2005年に同大学院修士課程を修了。2007年より、総合研究大学院大学文化科学研究科にて博士後期課程に在籍。

2003年以来ナイジェリアでフィールドワークに従事し、造形活動にたずさわる人びとをテーマに研究をおこなっている。

(株)清水弘文堂書房

TEL 03-3770-1922 FAX 03-6680-8464

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