d beauty of 9ja ― 魅するもの、ナイジェリアから


Thank God for Journey Mercy

2011年7月23日

2011年7月10日 ラゴス オショディ・アパパ・エキスプレスウェイにて

「忘れ物はない?」
出発の朝、空港へ向かうまえに、母親のようにまじめな顔をしてシェグンが言った。
「ないない。もういいけん早く行こうよ」
外は大雨による洪水。わたしは焦っていた。
「…………」
コンクリートの部屋の扉に手をあてて、目をつぶったまま彼は祈っている。

30時間後、自宅に着いてすぐ彼に電話した。
「日本に無事に着いたの? ああ、神さまありがとう」
電話の向こうのシェグンの声は、雨音でとぎれとぎれに聞こえる。
「ぼくたち? あれから車はシートまで浸水して、4時間かけてやっと帰ったんだ。神さまの力でね」

畳の部屋にいるわたしは、神を信じて生きる友人を感じながら、ここにたどり着いたことを神に感謝した。

Photo
ラゴス国際空港までの道のりは浸水し、洪水のなか通常の3倍の時間をかけて、わたしを乗せたシェグンと彼の兄の車は進んだ。わたしを送ったあと、シェグンたちは通常の8倍の時間をかけて家までたどり着いた。雨季のナイジェリア、とくに大西洋沿岸部のラゴスは頻繁に大雨が降り、たちまち洪水を起こす。車は道路にできた池のなかをゆっくり進んだり、池を避けて反対側車線を進む(写真左)。車の故障や渋滞による立ち往生に困り果てながらも、なんとか無事に目的地に着くと、彼らはかならず「Thank God for journey mercy(無事の旅路を神に感謝)」と言って喜びあう。
2011年7月10日 ラゴス オショディ・アパパ・エキスプレスウェイにて

(毎週土曜日更新)



著者紹介

緒方しらべ

緒方しらべ (おがた・しらべ)

1980年島根県に生まれる。18歳まで福岡県で育つ。ロンドン大学東洋アフリカ学院(SOAS)にて学士課程をへて、2005年に同大学院修士課程を修了。2007年より、総合研究大学院大学文化科学研究科にて博士後期課程に在籍。

2003年以来ナイジェリアでフィールドワークに従事し、造形活動にたずさわる人びとをテーマに研究をおこなっている。

(株)清水弘文堂書房

TEL 03-3770-1922 FAX 03-6680-8464

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