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ジェイコブに誘われて

2010年11月6日

アーティストたちのことを知ろうとしながらも、作品をつくるということがまったくわからない。とにかくわたしもやってみた。

縁あって、ナイジェリアのアーティストたちが主催する国際ワークショップに参加することになった。熱帯にあるイフェから北上し、陸路13時間。乾燥した高原地帯に入って辿りついた会場は、赤茶の砂の舞う.台地にあった。車を降りて、土で覆われたボンネットに指で線を描く。赤茶色の背景に、不器用な線画が浮かびあがる。

10人のアーティストたちのなか、「ひとりの素人」。アーティストたちのことを研究するわたしは、アーティストでもなければ、作品をつくるためのまともな知識も技術もない。ワークショップのリーダー、ジェイコブは言った。
「知らないからいいんだよ。あたらしい発見があるかもしれないでしょ。なんでもいいからやってみて」

アーティストたちのことを知ろうとしながらも、作品をつくるということがまったくわからない。とにかくわたしもやってみた。ジェイコブに誘われるがまま、サハラ砂漠から吹く風に身を任せて。ほんの少し、つくるという感覚にふれることのできた2週間だった。

Photo
共有スタジオから少し離れた場所で、ひとり静かに作品をつくるジェイコブ。木炭で熱を発する旧式のアイロンをキャンバスに焼きつかせ、その焦げ目で模様をつくっていた。
2008年12月7日 プラトー州パンクシン、「アフターシェイブ・ワークショップ」の会場にて

(毎週土曜日更新)