d beauty of 9ja ― 魅するもの、ナイジェリアから


染みた果汁

2010年8月28日

乾季の深まる1月から3月が旬の果物、カシュ。えぐみが強く、同時にハチミツのように甘い。果汁が「「服にた垂れないよう」」気をつけながら、、まる丸かじりして食べる。うすみどり色のへたを煎ると、割ってなか中からででてくるナッツ(カシュナッツ)も食べることができる。2009年1月25日、イフェ、モダケケ地区の下宿にて

どうしようもないえぐみが、びりびりと舌にくる。
「(中国語をまねて)チンコー! チンチョン!」もうやめて。「男か? 女か?」そんなにじろじろひとの体を見んでって。「今日はなにを持ってきてくれたの?」毎回持ってこれるわけなかろうもん。「オロリブルクッ(腐った頭)! ぼーっと歩いてんじゃねぇぞっ」そっちがバイクで蠅みたいに飛び交うけんやろ。ああもう、血がでてきたやん。

そして信じられないほどに甘い果汁が、その舌を覆う。
「疲れたでしょう、ゆっくり休むのよ」帰り道、魚屋のおばさんがかけてくれるいつもの声。「ペレオー(大丈夫? 痛かったでしょう)」でこぼこ道を行くバスのなか、窓で頭を強くぶつけた瞬間、乗客全員が振り返ってそう言ってくれた。あってないような約束の日時――アフリカン・タイム。それを毎回守り、ばかを見るわたしに、「ごめんね」を素直に言える、ナイジェリアの人びと。

「酸が強いから食べ過ぎないように」
と言われるけれど、やめられない。かじるとたれる強烈にえぐくて最高に甘い果汁は、服につくと、洗ってもとれない。それを味わった人たちが、 9ja から離れられないかのように。

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乾季の深まる1月から3月が旬の果物、カシュ。えぐみが強く、同時にハチミツのように甘い。果汁が「服にたれないよう」気をつけながら、まるかじりして食べる。うすみどり色のへたを煎ると、割ってなかからでてくるカシュナッツも食べることができる。
2009年1月25日、イフェ、モダケケ地区の下宿にて

(毎週土曜日更新)



著者紹介

緒方しらべ

緒方しらべ (おがた・しらべ)

1980年島根県に生まれる。18歳まで福岡県で育つ。ロンドン大学東洋アフリカ学院(SOAS)にて学士課程をへて、2005年に同大学院修士課程を修了。2007年より、総合研究大学院大学文化科学研究科にて博士後期課程に在籍。

2003年以来ナイジェリアでフィールドワークに従事し、造形活動にたずさわる人びとをテーマに研究をおこなっている。

(株)清水弘文堂書房

TEL 03-3770-1922 FAX 03-6680-8464

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