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ロータリーの青い空

2010年6月5日

カメラにおさめた、めずらしく青い空と大きな看板。2009年6月16日 イフェ、モダケケ地区とイレモ地区にまたがるロータリーにて

バス停に向かっていつものロータリーを歩いていたわたしは、ふと見あげた看板の背景が青いことに気づいた。なぜだろう、ここでは空が真っ青になる日は少ない。雲があってもなくても、空は白っぽく、淡い水色をしていることがほとんどだ。

イフェ市街地や大学キャンパスまでの幹線道路、そして周辺都市へのバイパスのジャンクションとなっているこのロータリー。わたしが初めてイフェにやって来た2003年は、19世紀からつづいていた土地の所有や支配の権利をめぐる紛争が沈静化してまだ間もないころだった。対立する2つのコミュニティの境界線状にあるこの周辺には、紛争時に焼かれ荒廃した家屋が多く残り、店舗や看板の数もまだ少なかった。

あれから6年。スピードを増し、目に見えてその姿を変えていくイフェ。答えが見つからないまま、手さぐりでフィールドワークをつづけているわたし。今年、高さ15メートル以上の大きな黄色い看板が立ったとき、驚きとともに焦りすら覚えた。

黄色い看板には、南アフリカで開催されるサッカー・ワールドカップのスポンサーをつとめる大手携帯電話会社による広告。空に現れた大きな黄色いサッカーボールには、「FOOTBALL THE UNIVERSAL LANGUAGE――サッカーは世界共通言語」と刻まれている。

ごくまれに表情を変えるこの空は、変化をとげてゆくこの地を、変わらず見つめつづけているのだろう。

Photo
カメラにおさめた、めずらしく青い空と大きな看板。
2009年6月16日 イフェ、モダケケ地区とイレモ地区にまたがるロータリーにて

(毎週土曜日更新)