d beauty of 9ja ― 魅するもの、ナイジェリアから


その顔を見せて

2010年5月8日

約束の記念写真を撮る準備をするみんな。左から、ママケイ、パパケイ、右から二人目がタヨ。ほかはママケイの見習いの女性たち。2009年10月6日 イフェ、イレモ地区のママケイの店にて

「明日来ると思ってたのに……」
着古したTシャツに膝丈のスカートでミシンに向かうタヨが、残念そうに言う。アーティストのパパケイの夫人、ママケイが営む仕立屋に見習いで通うタヨと、この翌日、わたしは記念写真を撮る約束をしていた。4か月近くつづいた大学のストライキが解除されることになり、翌週、タヨは大学がある隣の州に戻ることになっている。

一緒に撮れるならそれでいい。着飾ってポーズをキメた肖像写真よりも、自然なままをとらえたスナップ写真のほうがいい。そう勝手に思って、ごつい一眼レフをしょっちゅうみんなへ向け、ファインダー越しにみんなを覗く。突出したレンズと黒いボディで右目と右頬、鼻と口までも隠し、左目は細めてひとみを見せない。こちらを見るみんなの気持ちを想像する間もなく、シャッターを切ってきた。

翌日、タヨは、ピンクのブラウスに黒のロングスカートで身をつつんでいた。ブラウスと同じ色のチョーカーとブレスレットでアクセント。たっぷりのグロスでくちびるを輝かせ、わたしの到着を待っていた。

「ちょっと待って!」
と、タヨたちは白い粉を顔にはたきだす。これがなければ肌がてかってしまうらしく、粉を顔にまんべんなくのばすみんな。かまえたカメラを、胸までおろすわたし。そのままで十分きれいなのにと思いながらも、ただみんなを見ていた。シャッターを切る前の、穏やかな数十秒が過ぎていく。

Photo
約束の記念写真を撮る準備をするみんな。左から、ママケイ、パパケイ、右から二人目がタヨ。ほかはママケイの見習いの女性たち。
2009年10月6日 イフェ、イレモ地区のママケイの店にて

(毎週土曜日更新)



著者紹介

緒方しらべ

緒方しらべ (おがた・しらべ)

1980年島根県に生まれる。18歳まで福岡県で育つ。ロンドン大学東洋アフリカ学院(SOAS)にて学士課程をへて、2005年に同大学院修士課程を修了。2007年より、総合研究大学院大学文化科学研究科にて博士後期課程に在籍。

2003年以来ナイジェリアでフィールドワークに従事し、造形活動にたずさわる人びとをテーマに研究をおこなっている。

(株)清水弘文堂書房

TEL 03-3770-1922 FAX 03-6680-8464

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