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エクーエワ

2010年2月27日

年の瀬、娘のブリジッタに髪を結ってもらい、新しい年を迎える準備をするお母さん。2008年12月27日 イフェ、モダケケ地区の下宿先にて

いつものように出かけようとすると、下の階に住むおばさんと娘のブリジッタが外に椅子を持ちだし、重なりあうように腰掛けている。街角でもよく目にする女性ふたりの姿だ。

服、靴、鞄、アクセサリーなどの装飾品、そしてメイクアップにヘアー・スタイルと、女性たちはつねにファッションに敏感である。男性たちも、出かける前のお風呂(水浴び)、服のアイロンがけ、靴磨き、髪のブラッシング、香水といった身だしなみをとても大切にする。

いつも着まわしている服にうす汚れたスニーカー、背中にはゴツゴツのリュックサック、ノーメイクにピアスもなし。髪はくくって団子にし、指輪もネックレスもしないわたしは、お洒落じゃないどころか男性と思われることが多い。

ブリジッタが編みこんでいるのは、おばさんの髪の毛と買ってきたつけ毛。母のひたいの生えぎわから髪を少量ずつ編みこみ、毛先まで編み終えないうちに、母の手にあるつけ毛を少量ずつ受け取って母の髪に編みこんでいく。これを5~7時間、何度も繰りかえす。こちらの女性は、髪の毛の性質上、肩よりも長く髪を伸ばせることはほとんどない。つけ毛で自分の髪に長さとボリュームを持たせたり、西洋や東欧風の髪型にしたりして新しいヘアー・スタイルを楽しむ。つけ毛が500ナイラ(約300円)、美容師に頼めば編みこみ代がさらに500ナイラ以上。お洒落はけっして安くない。

こんな女性ふたりに出会えば、みんな決まって「エクーエワ (E ku ewa)」と声をかける。「エワ」とはヨルバ語で「美しさ」の意。さまざまな状況に適した挨拶を欠かさないヨルバの人たちの表現だが、「お美しゅうございますね」とでも訳せるだろうか。

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年の瀬、娘のブリジッタに髪を結ってもらい、新しい年を迎える準備をするお母さん。
2008年12月27日 イフェ、モダケケ地区の下宿先にて

(毎週土曜日更新)