d beauty of 9ja ― 魅するもの、ナイジェリアから


出発

2010年1月22日

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トインはこの前日、弁護士になった。合計2年間つづいた大学のストライキを経て、5年制の法学部を7年間かけて卒業。その後、司法学校に1年間通い、見事ストレートで司法試験に合格した。

司法学校に通学中、マラリアとチフスの合併症を患い、肺炎もおこした。肺の痛みをこらえ、吐き出る血におびえながら勉強をつづけた。眠くなるたびに自分自身に言い聞かせた言葉。

「これで試験に落ちたら、もう一度学費を払うことなんてできない」

朝7時過ぎ、早朝は10度台だった気温が25度前後まで上がってくるころ。乾季の太陽はわたしたちを射しはじめた。すでに多くの旅人や物売りの人びとがバスのまわりに集まっている。ナイジェリアの長距離バスのほとんどは、白のトヨタ・ハイエース。授与式のある首都アブジャまで陸路10時間の旅。招待したかった母親と3歳の息子は来ることができなかった。家族みんなを代表して来たわたしを、トインはバスが発車するまで見送ってくれた。職探しと子育てというこれからの大きな不安を抱えながらも見せてくれた彼女の笑顔は、バスの窓越しでもまぶしかった。

Photo
弁護士資格授与式の翌日、「式に来てくれてありがとう」と、バスが発車するまで見送ってくれたトイン。
2009年11月4日 アブジャ、ウタコ・バスターミナルにて

(毎週土曜日更新)



著者紹介

緒方しらべ

緒方しらべ (おがた・しらべ)

1980年島根県に生まれる。18歳まで福岡県で育つ。ロンドン大学東洋アフリカ学院(SOAS)にて学士課程をへて、2005年に同大学院修士課程を修了。2007年より、総合研究大学院大学文化科学研究科にて博士後期課程に在籍。

2003年以来ナイジェリアでフィールドワークに従事し、造形活動にたずさわる人びとをテーマに研究をおこなっている。

(株)清水弘文堂書房

TEL 03-3770-1922 FAX 03-6680-8464

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