第23回 勝利か死か
2010年12月26日
写真: 命を賭した闘い。ドミニカ共和国、サント・ドミンゴの闘鶏場にて
街角の闘鶏場
「ブランコ(白)、ブランコ!」「アスール(青)、アスール!」
試合開始のベルが鳴っても、観客席の賭け金を煽る声はやまない。最前列に陣取ったオヤジさんは腕組みのまま、一点を凝視してうごかない。まのびした実況の声が、ガジェータ(駄菓子)売りのかん高い声に折り重なる。その直後、首根っこを押さえつけられ、踵で蹴りあげられた鶏の悲痛な叫び声が、会場の怒号のなかをぬって私の耳にまで届いた。
その日、首都郊外の下町にはじめて足を踏みいれた。闘鶏を見るためである。バスを2台乗り継ぎ、教えられたところで降りる。来た方向に少し歩いて、ピカ・ポージョ(中華料理店)の角まで来たら左に曲がるように、たしかにジョアンはそう言った。